相続や資産整理、ライフスタイルの変化などをきっかけに、土地を売却しようと考える人は少なくありません。しかし、土地の売買には想像以上に多くの手順と専門的な知識が求められます。
特に初めて土地を売る方は、土地売買の流れや注意点を事前に把握しておくことがとても大切です。また、買取という形を選ぶ場合、通常の仲介売却とは異なる点も多く存在します。詳しく知らずに手続きを進めてしまうと、後々トラブルに繋がることも…。
そこでこの記事では、土地買取の流れや売買で注意すること、メリット・デメリットについても詳しく解説していきます。
一般的な土地買取の流れについて

土地を手放したいと考えたとき、スムーズに売買を進められるのが「買取」という選択肢です。ここでは、不動産会社による土地買取の一般的な流れをステップごとに分かりやすく解説します。
1. 土地の情報整理と書類の準備
土地を買取ってもらうには、まず所有する土地の状態を把握し、基本情報を整理することから始まります。立地・面積・用途地域・接道の有無などの情報は、買取価格に大きく影響します。
必要書類としては、登記済権利証(登記識別情報)・固定資産税納税通知書・本人確認書類などがあり、事前に用意しておくことで査定や契約手続きが円滑になります。
2. 不動産会社へ査定依頼
情報整理ができたら、不動産買取業者へ査定を依頼します。
買取の場合は、不動産会社の「直接買取」となり、仲介のように買い手を探す必要がないため、スピーディーな取引が可能です。査定では、土地の立地・形状・周辺の売買事例・法的制限などをもとに価格が算出されます。
買取においては「査定額=買取価格」となる場合が多いため、査定額の高い会社に買取ってもらいましょう。複数の業者に査定依頼することで、相場や対応の丁寧さを比較でき、信頼できる業者を見極めることができます。
3. 査定額の確認
業者から査定額の提示を受けたら、その内容をよく確認しましょう。
提示された査定額が想定よりも低い場合は、その理由をしっかりと聞き、必要に応じて交渉することも可能です。業者によっては解体費用や測量費用を差し引いた価格を提示している場合もあります。
また、買取条件が不利になっていないか、手数料は適切かなど、査定額以外の部分も確認しておきましょう。査定額があまりに高すぎる場合は特に注意が必要です。
4. 売買契約の締結
価格や条件に合意できたら、正式な売買契約を締結します。契約書には、土地の詳細情報・引き渡し日・代金支払日などの条件が記載されます。重要事項の説明を受けた上で署名捺印を行い、契約が成立します。売主側も身分証明書や印鑑証明書などの書類を用意しておく必要があります。不明な点がある場合は契約前に必ず確認し、納得したうえで契約することが大切です。
売買契約が成立すると、不動産会社から売却価格の5~10%の手付金が支払われますが、何らかが原因で契約解除となる場合は、手付金を2倍にして返還しなければいけないので、手付金は使わないようにしましょう。
5. 代金受理と土地の引き渡し
契約が済んだ後は、決められた日程で代金が支払われ、土地の引き渡しが行われます。買取の場合は、現金一括での支払いが基本となるため、売却後すぐに資金を得られます。代金受理後は、名義変更の登記手続きが行われ、これにより法的にも土地の所有権が不動産会社へ移転します。
土地買取で準備しておくものとは?

土地買取の手続きを円滑に進めるためには、事前に必要な書類を準備しておくことが大切です。
1. 登記済権利証または登記識別情報
これらは、売却予定の土地の所有権を証明する重要な書類のことです。
登記済権利証は紙の証明書で、登記識別情報は2005年から導入された12桁のパスワードからなる通知書です。これらが無い場合、再発行はできませんが、司法書士による本人確認情報の提供などで対応可能です。
2. 固定資産税納税通知書
毎年送付される固定資産税の納税通知書は、土地の評価額や税額を確認するために必要です。これにより、買主との税負担の清算や価格交渉がスムーズに進みます。
3. 本人確認書類
運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど、売主本人を確認できる書類が必要です。これにより、契約時の本人確認が行われます。住所変更がある場合は、住民票の提出も求められることがあります。
4. 印鑑証明書
実印の証明として、市区町村で発行される印鑑証明書が必要です。 発行から3ヶ月以内のものが有効とされるため、決済直前に取得することが望ましいです。
5. 購入時の売買契約書・重要事項説明書
土地を購入した際の契約書や重要事項説明書が残っていれば、土地の履歴や特記事項を確認するために役立ちます。
土地を買取ってもらうメリット・デメリット

土地を不動産会社に買い取ってもらう際には、迅速な現金化や手間の軽減といったメリットがある一方で、売却価格が市場相場より低くなるデメリットも存在します。以下では、土地買取の主なメリットとデメリットを詳しく解説します。
メリット
1. 迅速な売却と現金化
不動産会社が直接買主となるため、買主を探す手間が省け、短期間での売却が可能です。そのため、資金を早急に必要とする場合や、転勤などで早急に手放したい場合に適しています。
2. 仲介手数料が不要
自分で土地を買取ってもらう不動産会社を見つけた場合は、仲介業者を介さないため、通常は発生する仲介手数料がかかりません。これにより、売却に伴うコストを削減できます。
3. 契約不適合責任が免除される
買取の場合は、売主の契約不適合責任(瑕疵担保責任)を免除されるケースが一般的です。売却後に隠れた欠陥が見つかった場合でも、責任を問われるリスクが低減します。
4. 近隣に知られずに売却可能
売却活動を行わないため、近隣住民に売却を知られることなく手続きを進めることができます。プライバシーを重視する方にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
デメリット
1. 売却価格が市場相場より低い
買取における最大のデメリットが、売却価格が市場相場より低いことです。
不動産会社は再販を前提としているため、買取価格は市場相場の6~8割程度になることが一般的です。高値での売却を希望する方にとって、買取は不向きと言えるでしょう。
2. 買取対応の不動産会社が限られる
全ての不動産会社が買取を行っているわけではなく、対応可能な会社が限られます。そのため、適切な買取業者を自力で見つけるのに時間がかかることがあります。
土地買取における注意点について

土地買取を行う際は、複数の業者に査定を依頼することが大切です。1社のみで決めてしまうと、相場よりも低い価格で売却してしまうリスクがあります。複数の不動産会社に査定を依頼し、土地の適正価格を把握しましょう。
次に、買取契約を締結する際には、契約内容を詳細に確認することを忘れないでください。契約を交わす前に全ての内容を理解し、不明点があれば質問することが大切です。
そして、買取業社の信頼性も慎重にチェックする必要があります。業者を選ぶ際は、過去の実績・顧客からの評判・資格の有無・保証やアフターフォローサービスの充実さなど、査定額以外の部分も重視することが大切です。
まとめ
今回は、土地買取の流れや売買で気をつけることを解説してきました。
土地買取の一般的な流れは「土地の情報整理と書類の準備」から始まり、「不動産会社へ査定依頼」「査定額の確認」「売買契約の締結」「代金受理と土地の引き渡し」と進んでいきます。
土地買取のメリットとしては、迅速な売却と現金化・仲介手数料が不要・契約不適合責任の免除などが挙げられます。デメリットとしては、売却価格が市場相場より低くなることです。時間をかけてでも高価での売却を希望する方は、仲介売却の方が最適だと言えます。