不動産を売却する際、抵当権抹消の手続きは避けて通れない重要なステップです。この記事では、抵当権抹消の必要性、手続きの流れ、そしてそれに伴う費用について詳しく解説しています。
住宅ローンを完済した後、登記簿謄本から抵当権の記載を消去する「抵当権抹消登記」は、法的義務ではありませんが、抵当権の登記が残っていると、売却や新たな融資を受ける際にっも不都合が生じる可能性があります。
この記事を読むことで、抵当権抹消の正しい手続き方法とその重要性を理解し、スムーズな不動産売却を行うことができるでしょう。
抵当権とは?抵当権の基本とその重要性について
抵当権とは、不動産などの動産を担保に、金銭の債権を保全する権利のことです。抵当権は、担保物権の一種であり、債権者が債務者が債務を履行しなかった場合に、担保物件を換価処分して債権を回収することができます。
抵当権は、民法第332条第1項に定められています。
債権者は、担保物権の目的である動産又は不動産について、債務者がその債務を履行しないときは、その動産又は不動産を換価処分してその代価の中から自己の債権の弁済を受けることができる。
民法第332条第1項
この条文により、債権者は、担保物権の目的である動産や不動産を換価処分して、債権の回収をすることができることになっています。
抵当権の具体的な事例としては、例えば住宅ローンが挙げられます。住宅ローンを借りる場合、金融機関は、債務者の自宅に抵当権を設定します。債務者が住宅ローンの返済を滞納した場合、金融機関は、自宅を競売にかけて、その代価から住宅ローンの残債を回収することができます。
不動産売却時における抵当権抹消の必要性とは
不動産を売却する際には、住宅ローンなどの借入が残っている場合、抵当権抹消の手続きを行う必要があります。抵当権が残ったままでは、売却が成立しない可能性があるためです。
買主が抵当権を承継しない
抵当権は、登記によって公示されます。そのため、不動産を売却する際には、買主は、登記簿謄本で抵当権の有無を確認することができます。抵当権が残っている場合、買主は、抵当権の解除や引受を金融機関と交渉する必要があります。
買主が抵当権の解除や引受を金融機関と交渉しても、金融機関が承諾してくれない場合は、売却が成立しない可能性があります。
所有権移転登記ができない
抵当権は、所有権に優先する権利です。そのため、抵当権が残ったままでは、所有権移転登記を行うことができません。
所有権移転登記が完了しないと、売却代金の支払いを受けることができず、売却が完了しません。
抵当権の抹消費用を負担する
抵当権の抹消には、印紙代や司法書士費用などがかかります。売却時に売主が抵当権を抹消する場合、これらの費用は、売主が負担することになります。
抵当権抹消登記の手続きとタイミングについて
抵当権抹消登記のタイミングですが、主に以下の3つのケースで必要とされます。
不動産を売却してローンを完済したとき
不動産を売却する際、売却代金でローンを完済するケースが多いです。この場合、売却と同時に抵当権抹消登記を行うことが一般的です。
抵当権のある物件を相続するとき
抵当権が設定された物件を相続した場合、相続人がローンを引き継ぐか、他の資金でローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。
その物件を担保に新たな融資を受ける場合
すでに設定されている抵当権があると、新たな融資を受ける際に不利になることがあります。そのため、新たなローンを組む前に、既存の抵当権を抹消することが推奨されます。
抵当権抹消登記の手続きは、必要書類を揃え、法務局に提出することで行います。この手続きは自分で行うことも、司法書士に依頼することも可能です。自分で行う場合は費用を抑えられるメリットがありますが、手続きに不安がある場合は専門家に依頼することをお勧めします。
抵当権抹消に関わる費用とその内訳
先述しましたように抵当権抹消には、
- 印紙代
- 司法書士費用
上記の費用がかかります。
印紙代
不動産にかかる抵当権抹消には、印紙代が1筆につき1,000円かかります。例えば、土地と建物が1筆ずつある場合は2,000円となります。
司法書士費用
司法書士費用は、司法書士に抵当権抹消登記の手続きを依頼した場合にかかる費用です。司法書士費用は、司法書士によって異なりますが、10,000円~20,000円程度が相場になります。
抵当権抹消には、登記費用と司法書士費用がかかります。抵当権抹消の費用を安くする方法としては、自分で手続きを行う、司法書士費用の相見積もりを取る、などが挙げられます。
抵当権抹消の費用は、売却代金から差し引いて支払うことができませんので、注意するようにしましょう。
抵当権抹消の方法や手順について
住宅ローンを完済すると、銀行から抵当権解除証書、委任状、登記済権利証または登記識別情報通知などの書類が送られてきます。これらの書類は抵当権抹消の手続きに必要です。
抵当権を抹消する不動産についての情報を調べるため、登記事項証明書を法務局で取得します。
不動産所有者の登記上の住所・氏名から変更がある場合、所有権登記名義人表示変更登記が必要です。
必要な書類を揃えたら、登記申請書を作成し、管轄の法務局へ申請します。申請は窓口で直接行うか、郵送で行うことができます。
登記完了日を確認し、法務局で抵当権抹消後の書類を受け取ります。
抵当権抹消の費用は、不動産の筆数に応じた印紙代(1筆につき1,000円)と、司法書士に依頼する場合の司法書士報酬(10,000円〜20,000円程度)がかかります。自分で手続きを行うことも可能ですが、手続きが複雑である場合や必要書類を紛失した場合などは、司法書士に依頼することが一般的になります。
抵当権抹消は不動産取引や新規融資をスムーズに行うために重要な手続きです。手続きは複雑であるため、必要書類を正確に準備し、手続きの流れをしっかりと理解して行うことが大切です。また、手続きに不安がある場合は、専門家である司法書士に依頼することをお勧めします。
抵当権抹消を怠った際のリスクと対策
抵当権抹消を怠ると、様々なリスクが生じる可能性があります。
抵当権とは、債権者が債務者に対して有する債権を担保するために、不動産の所有者が設定する担保権のことです。この抵当権は、借金を完済しても自動的に消えるわけではなく、抵当権抹消登記を申請する必要があります。
抵当権抹消登記を怠った場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
競売の申し立てをされるリスク
抵当権設定登記がある状態では、裁判所は担保不動産競売の開始決定をしてしまう可能性があります。被担保債権が完済されたことを立証する必要があり、このプロセスには時間と労力を要してしまいます。
すぐには抹消できないリスク
抵当権者からもらった必要書類を紛失していることがよくあります。抵当権者に依頼すれば委任状などは再発行してもらえますが、登記識別情報(または登記済証)は法務局でも再発行できません。この場合、抵当権者の印鑑証明書が必要になり、登記完了までに時間がかかってしまいます。
これらのリスクを避けるためには、抵当権抹消登記を早めに行うことが重要です。
手続きに不安がある場合は、やはり登記の専門家である司法書士に相談することをお勧めします。司法書士に依頼することで、申請書の作成や提出する時間が節約でき、抹消登記を急いでいる場合にもスムーズに進めることができます。
まとめ
抵当権抹消は、住宅ローン完済後に不動産登記簿から抵当権を消す手続きです。自動で消えないため、放置すると不動産売却や新規融資に支障が出るリスクがあります。
必要書類の紛失や手続きの複雑化も問題です。早めに法務局に申請するか、不安なら司法書士に依頼しましょう。これにより、スムーズな不動産取引や資金調達が可能になります。